ヘイズだけじゃない。マレーシアの「暑さ」と住まいの電気代のリアルな関係
マレーシアの8〜10月は、毎年のように「ヘイズ」がニュースになります。「目がかゆい」「喉がイガイガする」「マスクが必要」多くの方はこのようなイメージを持っているのではないでしょうか。
ですが実は、ヘイズが私たちの暮らしに及ぼす影響は、体調面だけにとどまりません。今回は最近のニュース記事をもとに、ヘイズと「住まい選び」という、一見つながりのなさそうなテーマの意外な関係について、詳しく紹介していきます。
そもそもヘイズとは?なぜ8〜10月に多いのか
ヘイズとは、主にインドネシアのスマトラ島やカリマンタン島で行われる野焼き(森林火災・泥炭地の火災)によって発生する煙が、季節風に乗ってマレーシアやシンガポールに流れ込む現象です。乾季にあたる8〜10月は野焼きが増える時期と重なるため、この時期にヘイズが発生しやすくなります。
ヘイズが発生すると、空気中に含まれる微小粒子状物質「PM2.5」の濃度が大きく上昇します。PM2.5は髪の毛の太さの30分の1程度という非常に小さな粒子で、肺の奥深くまで入り込みやすく、咳や喉の痛みだけでなく、長期的な呼吸器・循環器への影響も指摘されている物質です。
マレーシアの大気汚染、実はこれくらい深刻
IQAirが発表している2025年版「World Air Quality Report」や、WHO(世界保健機関)の大気質ガイドラインを見ると、マレーシアの年間平均PM2.5濃度は、決して低い水準とは言えません。ヘイズが発生する時期には、この数値がさらに上振れすることになります。
つまり、ヘイズは「一時的な特別なイベント」というより、「普段からある大気汚染が、季節的に悪化するタイミング」と捉えたほうが実態に近いといえます。
しかも、マレーシアは年々暑くなっている
もうひとつ見逃せないのが、気温そのものの上昇傾向です。マレーシア気象局(METMalaysia)が公表しているデータによると、1969年以降、10年ごとに平均気温が約0.24℃ずつ上昇しているとされています。
一見小さな数字に見えるかもしれませんが、これが数十年単位で積み重なることで、体感としても「昔より暑くなった」と感じる変化につながっています。ヘイズによる大気汚染と、じわじわ進む温暖化。この2つが同時に進行しているのが、いまのマレーシアの気候事情です。
ここで生まれるジレンマ:「窓、開けたいけど開けられない」
気温が上がれば、当然「窓を開けて風を通したい」と考えるのが自然です。しかしヘイズの時期は、窓を開けると外のPM2.5を多く含んだ空気がそのまま室内に入り込んでしまいます。
結果として頼ることになるのが、エアコンや空気清浄機です。換気の代わりに機械に頼る時間が増えるということは、そのぶん電気の使用量も増えるということを意味します。
実際どれくらい電気代が増えるのか
The Starの記事「Keeping homes cool and healthy」(2026年9月27日)で紹介されている試算によると、1馬力のエアコン4台を1日3時間使用した場合(月間の使用量に換算すると約309.6kWh相当)、月の電気代は約RM140増加するとされています。
RM140という金額だけを見ると「そこまで大きくない」と感じるかもしれません。ですが、これが毎月、ヘイズの季節だけでなく年間を通じて積み重なっていくものだと考えると、家計への影響は決して無視できるものではありません。特に複数の部屋でエアコンを稼働させる家庭や、在宅時間が長い家庭ほど、この影響は大きくなりやすいといえます。
「安い家」の意味が変わってきている
ここまでの話を踏まえると、これからのマレーシアでの住まい選びにおいて、見直す必要が出てくるポイントがあります。それが「安い家」という言葉の意味そのものです。
これまで「安い家」というと、多くの場合は次のような、初期段階で見える金額を指していました。
- 購入するときの物件価格が安いか
- 借りるときの家賃が安いか
しかし今回のニュースが示しているのは、それだけでは住まいのコストの全体像は見えてこないということです。本当に見るべきなのは、次の視点を含めたトータルのコストです。
- 買うとき・借りるときの初期コストが安いか
- そこに住み続けるコスト(電気代などの生活コスト)が安いか
例えば、購入価格や家賃が多少高くても、日中の室温上昇が抑えられる設計の物件であれば、エアコンの稼働時間や台数を減らすことができ、結果的に月々の電気代を抑えられる可能性があります。逆に、初期費用だけが安く見える物件は、住み始めてから「思ったより電気代がかかる」というギャップに直面しやすいとも言えます。
物件を見るときにチェックしたい視点
では、実際に物件を探すとき、どのようなポイントを見ておくとよいのでしょうか。今回のニュースを踏まえると、次のような視点が参考になります。
- 日差しを遮れる設計になっているか:ベランダやルーバー、庇(ひさし)など、直射日光を遮る工夫があるかどうかは、室温の上がりやすさに直結します。
- 周囲に緑があるか:建物周辺の緑地や植栽の有無は、周辺の温度環境(いわゆるヒートアイランド現象の緩和)に影響します。
- 窓の向きや通風計画:ヘイズがない時期にどれだけ自然の風を取り込める設計になっているかも、年間を通じたエアコン依存度に関わってきます。
内見のときは、間取りや価格、立地といった分かりやすい条件だけでなく、「この家は暑い時期・ヘイズの時期をどう乗り切れそうか」という視点も持っておくと、住み始めてからのギャップを減らすことができるはずです。
まとめ
ヘイズは、単に「一時的に空気が悪くなる季節イベント」ではなく、気温の上昇傾向と組み合わさることで、私たちの暮らし方や住まい選びの基準そのものに影響を与え始めています。
「買うときの値段」「借りるときの家賃」だけでなく、「住み続けるコスト」まで含めて物件を見る。これからマレーシアで住まいを探す方にとって、今回紹介したような視点は、これまで以上に大切になってくるかもしれません。
